住まいにまつわるさまざまな税金の知識を、買うとき、売るとき、相続、賃貸経営・投資用不動産、外国在住の人など、具体的な場合別にまとめました。
初めての方にもスムーズにご理解いただけるよう、基本的な税制についてご紹介いたします。
平成28年4月1日時点の税制に基づいていますが、年度途中に税制が変更になったり、新たに詳細が決まったりする可能性もありますので、必ず個別にご確認ください
印紙税とは、住宅の売買契約書や住宅ローンの契約書などを交わすときに、契約書にかかる税金です。契約書に記載された金額によって税額が決まります。原則として収入印紙を契約書に貼付して印鑑を押して納税します。
登録免許税とは、土地建物等にかかわる登記をする際にかかる税金です。所有権にかかわる登記の場合には、その固定資産税評価額に、所定の税率を乗じて税額を求めます。抵当権の設定登記の場合の税額は、債権額(住宅ローンなどの借入額)に所定の税率を乗じます。納税は登記を申請するときに行います。
なお、建物が新築でまだ固定資産税評価額がない場合には、法務局所定の新築建物価格認定基準表を基に評価額を計算することになっています。
不動産会社から住宅を購入したり、住宅を建築したりする場合には、原則として、その代金を課税標準として消費税がかかります。土地は非課税ですが、建物は課税対象となるので、平成26年4月1日以降取引される建物には原則として譲渡金額の8%の消費税がかかります。そのほか、不動産会社への仲介手数料もその金額を課税標準として消費税が課税されます。
なお、消費税課税事業者ではない個人や免税事業者などが売り主の場合を除きます。
不動産取得税とは、不動産を取得したときに支払う税金です。固定資産税評価額に対して原則として税率4%を乗じた金額が税額となります。新築でまだ固定資産税評価額がつけられていない建物の場合には、都道府県知事が固定資産税評価額を算出する基準に基づいて、建物の評価額を計算することになっています。
なお、原則的な税額の求め方は次の通りです。
税額=固定資産税評価額(課税標準)×税率
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となります。課税庁である市区町村が税額を計算し、納税義務者に納税額を通知し、納税者はそれに基づき税額を納付します。
固定資産税・都市計画税は、固定資産税評価額(用語解説参照)を課税標準として計算されます。固定資産税評価額は3年に一回見直すことになっています。住宅や住宅用地については、課税標準や税額の軽減措置があります。
個人が資産を譲渡して利益が出た場合には、その利益を譲渡所得として所得税・住民税がかかります。住宅などの不動産を譲渡して得た所得の場合には、給与所得や事業所得などの他の所得とは別に、所定の税率によって課税されます。
不動産を譲渡したときには、譲渡所得税や住民税がかかりますが、マイホーム(居住用の住宅)を売却した場合には、税金を軽減する様々な特例があります。
マイホームなどの不動産を売却して損失が出た場合は、その損失を他の所得から差し引ける特例があります。売却しただけ(買い換えを伴わない)の場合は、特定居住用資産の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が利用できます。売却して新しい住宅を購入した(買い換えた)場合は、居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例が利用できます。
しかし、特定居住用資産の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例については、譲渡損失の計算方法が異なる点に注意しましょう。
平成28年4月1日から、相続による空き家の発生を抑制するために、実家を譲渡した場合の譲渡所得から特別控除できる特例が創設されました。一人住まいの親が亡くなって空き家になった実家を相続人が売る場合に、その譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことができるという特例です。
土地や建物の所在地、面積、所有者の情報などを登記簿に登録することを「登記」といいます。相続した土地などの不動産は、所有者が変わるため「所有権移転登記」をする必要があります。
この登記をする際にかかる税金が「登録免許税」です。
登録免許税=固定資産税評価額(課税標準)×0.4%
死去した人が所有していた財産を、その家族などが引き継ぐことを「遺産相続」といいます。この遺産が一定額を超えると「相続税」の支払い対象となります。遺産の総額から相続税法で決められている「基礎控除額」を差し引いた金額に相続税が課税されます。
不動産を売却したときは、不動産譲渡税が発生します。
不動産譲渡税とは、不動産を売却して得た利益に対して、20%の税金を支払うものです。もし不動産の売却費用が不動産の取得費用を上回って損が発生した場合、不動産譲渡税は課税されません。
個人が不動産を貸して家賃を受け取る場合、その不動産の賃貸にかかわる利益は「不動産所得」となります。不動産所得は、不動産を貸して得た収入から必要経費を差し引いた額となります。
不動産所得の金額=総収入金額-必要経費
不動産所得を、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して課税総所得額を計算し、それに所得税率を乗じたものが所得税となります。
所得税額=(不動産所得+給与所得や事業所得などその他の所得)×所得税率
アパート・マンションも、保有することにより固定資産税・都市計画税が課税されます。この固定資産税・都市計画税は、その土地、建物が不動産賃貸に100%供されている場合、不動産所得計算上必要経費になります。
前々年の課税売上高が1,000万円超の場合には消費税の納税義務が生じます。不動産賃貸の場合には、住宅の貸し付けにかかる賃料には消費税は非課税ですが、商業ビルや駐車場の貸し付けにかかる賃料には消費税がかかります。
ただし前々年の課税売上高が1,000万円以下でも、前年の1月~6月まで期間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、この課税期間から課税事業者となります。
また、課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出していた事業者については、課税売上高に対しみなし仕入れ率を適用して仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。
不動産業はみなし仕入れ率が50%ですが、平成27年4月1日以降に開始する課税期間からは、みなし仕入れ率が40%とされました。
非居住者※1、の方の場合でも、不動産を購入された場合には、購入後の不動産取得税と、毎年の固定資産税の納付義務があります。
国内に住所を有しない場合、固定資産税の納付を円滑にするためにも、国内に代理人を設定する自治体もございますので、詳しくは購入予定地の自治体にご確認が必要です。
所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
非居住者が不動産を売却した場合には、一定の条件に該当する場合、その不動産の購入者は売買代金の支払いの際※2、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収して税務署に支払う義務があります。
つまり、非居住者に支払われる金額は、支払金額の89.79%相当額で、残りの源泉徴収した10.21%相当額については、不動産の購入者が対価の支払をした翌月10日までに税務署に納付することになります。
売却した非居住者は、確定申告をすることにより源泉徴収された金額が精算されることになります。
なお、不動産の売買金額が1億円以下で、かつ、購入した個人が自己またはその親族の居住の用に供するためのものである場合には、源泉徴収の必要はありません。
手付金や中間金であっても、それが不動産の譲渡対価に充てられるものである場合は、それぞれの支払時に源泉徴収する必要があります。