記事紹介2022年11月14日
マンション価格が上昇し続けており、なかなか手が出ないといった声をよく聞くようになりました。こうしたなか、中古戸建て住宅の購入を検討する人が増えています。ただし、中古戸建ては中古マンション以上に品質にばらつきがあります。そこで今回は、最低限チェックをしておきたいと筆者が考える中古戸建て購入時のチェックポイントについてお話しします。
■現地で境界標をチェック
中古戸建てを購入するということは、建物に加えて土地もセットで購入するということです。なので、取引対象となる土地の範囲が明確になっていないと困ります。一般に不動産売買契約において、購入価格から手付金などを除いた「残代金」の支払日までに、売り主は買い主に対して現地で目印となる「境界標」を指示して隣の敷地との境界を明示することになっています。これを「境界明示」と言いますが、取引の際に実施していないケースが散見されます。なお、境界標がない場合は売り主が新たに設置して明示しますが、道路部分と土地との境界については省略が可能というケースが多いです。
境界明示は契約上、残代金の支払いまでに行うことになっていますが、契約前に売り主や仲介会社と一緒に現地で確認しておくのが理想です。その際、隣地の建物の軒やエアコン室外機といった「越境物」や、反対に隣地への越境物がないか確認することと、越境物があった場合の処理についても協議しておくことが大切です。
■容積率、超えると融資に影響も
容積率とは、土地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示すものです。例えば土地面積が100平方メートル、建物延べ床面積が160平方メートルという中古戸建てが売り出されているとしましょう。この土地の容積率が150%だとすると、建物の規模が超過していることに気づくと思います。容積率をオーバーした理由が法改正などで建築後に基準が変わったためであり、建築中は法律に従っていたのであれば、こうした建物は「既存不適格」と呼ばれます。違法ではありませんが、建て替える際は現在の基準に従う必要があるため、延べ床面積は最大で150平方メートルまでしか建築できないことになります。
一方、建築当時から容積率が150%であった場合は、違法建築である可能性が高くなります。既存不適格の建物のように同じ規模で建て替えができないだけでなく、住宅ローンによる資金調達ができなくなる可能性がありますので注意しましょう。既存不適格の建物でも、現在の法規制と比べて大きく逸脱している場合には住宅ローンが組めないケースもあります。組めても通常よりも金利が高くなってしまうことが多いです。なお、土地敷地面積に占める建築面積、つまり建物を真上から見たときの面積の割合を示す「建ぺい率」がオーバーしている場合も同様の問題をはらんでいます。
■劣化状況の確認
劣化状況は売買契約前にホームインスペクターや建築士などの専門家にチェックしてもらうのがベストではあります。しかし、時間や費用が足りないなどの理由でそこまでできないケースもあるでしょう。
その場合、最低限の確認しておきたいポイントは2つ。1つは修繕の履歴です。給湯器などの設備交換や外壁・屋根のメンテナンスがいつごろ行われたのかを教えてもらうなどして確認しましょう。特に外壁や屋根の修繕は立地によって違いはあるものの、10~15年程度の周期でメンテナンスするのがよいとされています。実施しているかいないかで劣化度合いと今後の修繕費用が大きく変わります。
もう1つは室内にある点検口から見える範囲すべての写真を撮らせてもらうことです。キッチンや洗面所の点検口なら給排水管が確認できる場合が多く、漏水があれば水染みが見つかることもありますし、蟻道(ぎどう)と呼ばれるシロアリの痕跡が発見できることもあります。屋根裏の点検口も雨漏りの痕跡などが見つかることがあります。写真撮影は仲介担当者にお願いすれば対応してくれると思います。
中古戸建ては、こうした問題を抱えている場合が少なくありません。仲介担当者がすべてをフォローしてくれるケースもありますが、買い主も意識してこうしたチェックポイントに注意を払えば、後々のトラブルリスクを大きく減らすことができると思います。
(日本経済新聞Webより引用)