記事紹介2022年12月12日

空き家の実家を相続 売却・賃貸・放置は市場性で判断

親が亡くなるなどして空き家となった実家を相続したら、どうすればよいのか。最近はメディアなどでよく採り上げられていることもあり、「自分が同じ立場になったらどうしよう」と不安になる方も多いでしょう。空き家を相続したら「売却する」「賃貸に出す」「放置する」の3つしか選択肢はありません。何を基準に選べばよいかやそれぞれの注意点について考えてみましょう。


■売却は「取得費加算特例」か「譲渡所得の特例」の適用時期に

空き家となった実家を兄弟姉妹が共同で相続したものの、将来誰も住む予定がないなら売却するのが有効な選択肢です。売却の時期として知っておきたいのが、「相続発生から3年10カ月以内」です。実家の譲渡所得を計算するにあたって、相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得にかかる税金を軽減できるというルール(「取得費加算特例」と言います)が使えるからです。

空き家の譲渡所得の特例を利用するという手もあります。相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月末まで、かつ2023年末までの売却で、一定の条件を満たせば譲渡所得から3000万円の控除が可能となり税金が軽減できる仕組みです。この特例は取得費加算特例とは併用できません。どちらを選ぶべきかは不動産会社や税理士などの専門家に相談して決めるとよいでしょう。


■賃貸は投資対効果に注意

思い出が残る実家に誰かに住んでもらいたい、という考え方もあるでしょう。賃貸に出す場合、注意したいのは投資対効果です。賃貸前に建物をリフォームせざるを得ない場合もありますので、その投資に見合ったリターンが得られるかどうかといった判断が必要になります。賃貸管理を不動産会社に依頼すればその分の管理費用もかかりますし、設備の修繕や交換といったコストもかかります。考えや事情が変わるなどして「売却したい」と思ったときに、賃借人がいると想定した価格を下回る可能性もあります。賃貸のままでは前述の空き家の譲渡所得の特例が使えないといった問題もあります。


■放置続けば「負の資産」に

相続の結果、実家を兄弟姉妹で共有したため方針を決められず、結果として放置を選ばざるを得ないケースも多いものです。放置した場合は単に支出がかさむだけの「負の資産」となります。固定資産税などの税金はかかりますし、庭木の剪定(せんてい)などの手間や維持管理費用もかかります。長期にわたって管理が適切に行われていないと近隣の住民からクレームが出ることもあります。

「いつでも売ったり貸し出したりできる物件だからしばらく様子を見たい」という正当な理由があって放置を選択するのは正しい判断だと思います。反対に買い手や借り手が少ない、あるいは減少傾向にあるという立地の物件ならば、放置せず早めに売却などの検討を始めておくべきだと思います。


■確認すべきは「市場性」

すでに気づいている読者の方も多いと思いますが、空き家となった実家をどう取り扱うべきかを考えるにあたって最初に確認すべきは「市場性」なのです。市場性とは「いつでも売れる、または貸せる物件かどうか」ということです。市場性が高く将来にわたって一定の売却価格や賃料収入が期待できるのであれば、固定資産税や維持管理に多少のお金がかかっても、判断を保留することはできます(もちろん、売却時の税金を軽減する特例を利用できる期間との兼ね合いは考える必要はあります)。


■年末年始こそ親族で話し合いを

空き家の実家を兄弟姉妹で共有している場合、意見をまとめるため年末年始の親族が集まる機会に問題提起するのはよいと思います。兄弟姉妹がそれぞれ別々の不動産会社に実家の市場性についてヒアリングしたうえで集まれば、議論が深まるよいきっかけになるのではないでしょうか。

(日本経済新聞Webより引用)