記事紹介2020年05月16日

【フラット35】緊急事態宣言が解除されたら2020年6月の金利はどうなる?

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年6月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

政府が緊急事態宣言を発令した4月から5月にかけては、活動自粛により経済が停滞しましたが【フラット35】の金利は下がらずに横ばいとなりました。そして、直近では各国で新型コロナウイルスの感染拡大で停滞した経済活動が再開し、投資家心理が上向いたことで比較的安全な資産とされる債券には売りが出て、債券価格が下がり、長期金利は上昇しています。

このまま、緊急事態宣言が解除されて、経済活動が開始されたなら6月の【フラット35】金利はどうなっていくのか?わかりやすく解説します。


■6月の【フラット35】金利予想の重要ポイントは?

6月の【フラット35】金利は5月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まります。それに大きく影響する要素は次の2つです。

・今後いつ緊急事態宣言が解除されるのか?
・緊急事態宣言の解除によって長期金利がどう反応するか?

【フラット35】の金利を予想するにあたり、20日ごろに発表される住宅金融支援機構の機構債の表面利率というものが何なのか?を理解しておく必要があります。

住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関なのですが、わたし達が融資を申し込む窓口については、民間の銀行が代行して行う形をとっています。そして、わたし達が住宅ローンとして借りるお金は、住宅金融支援機構が金融市場から調達して貸しているのです。

住宅金融支援機構が民間金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。

機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入します。そのため、表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。

そのため、6月の【フラット35】金利は5月20日までの長期金利の動向が影響し、その長期金利大きく影響する要素が目下の緊急事態宣言の解除と経済活動再開なのです。


■いつ緊急事態宣言が解除されるか?

新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言について、安倍総理は5月14日(木)に39県で解除すると表明しました。

5月に入った時点ですでに欧米各国では経済活動再開の動きが出ており、それを反映して連休明けの長期金利も上昇してきていました。市場は正式に緊急事態宣言が解除される前から経済活動が再開されることを現時点に織り込んでいたことがわかります。


■緊急事態宣言の解除が長期金利に与える影響は?

住宅ローン金利における「コロナショック」とは株価の下落とは逆方向に長期金利が上昇してしまったことを言います。

教科書的には、リスクが高まると安全資産の債券(日本国債)が買われ、債券価格が上がり利回り(長期金利)が下がるというのがセオリーです。コロナショックではリスク回避が行きすぎて安全資産まで売りに走ったために、債券価格が下って長期金利が上がるという現象が起きているのです。

その後、緊急事態宣言によって感染拡大は抑えられましたが、経済も停滞して金融市場の取引も活発に行われなくなりました。4月は原油先物価格が史上初のマイナスになるなど、大きな経済トピックがありましたが、これに対する長期金利の反応は鈍いものでした。

緊急事態宣言が現実に解除され、本格的に経済活動が再開されると、これまで鈍かった金利の動きも正常に戻ってきます。また、日本を含む主要国の経済活動再開は感染拡大第2波のトリガーにもなり得ることは言うまでもありません。これは再び3月のような乱高下となる可能性があることを意味します。


■実際の長期金利の推移と【フラット35】金利

【フラット35】の金利は毎月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まるため、ちょうど20日ごろの長期金利の影響を強く受けます。なので、機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利がどのくらいの水準になるか?が予想のポイントになります。

5月の【フラット35】が決まった前日の長期金利の終値は0.01%でしたので、4月の0.02%から0.01ポイント下がっていたのに、【フラット35】の金利は横ばいとなっています。

長期金利は連休明けから経済活動再開への期待から上昇していますが、そのペースは緩やかです。感染拡大の第2波への警戒が重しとなっているのでしょう。今の微妙な均衡関係が続けば、5月から6月にかけての【フラット35】金利はおおむね横ばいとなるでしょう。


■まとめ
この記事では執筆時点の状況が続くと仮定して一定の予想を立てていますが、実際の金利動向が異なってくる可能性は大いにあり得ることです。

特に、各国の経済活動再開を巡っては、金利が上昇する要素(景気回復)と金利が低下する要素(感染第2波)の両方があります。そして、感染拡大の第2波が想定を超えるものであった場合は、3月のコロナショックのように再び債券が売られて、金利が高騰するシナリオもあります。

今後、住宅ローンの実行までの間に、「どんな事件が起こり、それに金利がどう反応するのか?」を正確に予想することは非常に困難です。ある程度複数の金利タイプで審査を出しておき、想定外の事態に対する保険としてください。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

(マイナビニュースより引用)