記事紹介2020年07月08日
リクルート住まいカンパニーが、緊急事態宣言下の5月(17日~21日)に、緊急事態宣言発令(4月7日)以降に主に住宅の購入・建築・リフォームを検討した人を対象に調査を実施した。この調査によって、コロナ禍による住まい探しへの影響が浮き彫りになった。詳しく見ていこう。
■コロナ拡大で住まい探しに影響は?住まい探しは促進?抑制?
コロナの拡大によって住まい探しにどういった影響が出たか?
興味深い質問をしたところ、「検討を休止した、いったん様子見にした」(24%)、「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた」(23%)、「検討を中止した」(7%)と、住まい探しを“抑制”した人がいたことが分かった。
もちろん、外出自粛や密を避けるために外に出るのを避けた、という理由が大きいだろう。中には収入が減って住まい探しを断念した、という人もいるかもしれない。現実的に、モデルルームや住宅展示場などは緊急事態宣言でクローズしたところが多かったし、営業店舗までクローズした不動産会社もあったので、見学したくてもできる環境になかったという状況もあっただろう。
一方で、「住まい探しの後押しになった」(16%)、「住まい探し始めのきっかけになった」(15%)、「契約の後押しになった」(10%)と、むしろ住まい探しが“促進”されたという人もいた。
また、「検討している物件のエリアが変わった」(9%)、「検討している物件の種別が変わった」(8%)と、住まいを選ぶ際の選び方に“変化”があったという人もいたことが分かる。
“促進”という観点では、すむたすが2020年6月8日~6月15日に実施した「コロナ禍における『住まい選び』に関する意識調査」にも見られる。コロナの影響を受けて、すでに引越し済み、もしくは引越しを予定・検討している人が16.9%、「リノベーション予定」が6.8%と、2割以上が住み替えやリフォームを検討した結果になっている。
■コロナ禍の在宅勤務で、住宅に求めるニーズが変わった?
コロナ禍で住まい探しが促進されたり、選ぶ基準が変化したりするのはなぜだろう?
どうやら、緊急事態宣言下でテレワークが推奨され、在宅勤務を経験した人が多いという背景がうかがえる。
リクルート住まいカンパニーで「住まいの検討のきっかけ」を複数回答で聞いたところ、「結婚」(16%)、「転勤」(13%)、「第一子出生」(13%)、「転職」(9%)といった、ライフステージの変化などがきっかけになるのは、従来と変わらない結果だ。ただし、従来にはない「在宅勤務になった」(8%)が、きっかけ要因の上位に挙がる点に注目したい。
コロナ拡大で住宅に求める条件の変化を聞いたところ、僅差ではあるが「仕事専用スペースがほしくなった」(25%)が最多となった。スペースや広さへのニーズという観点で見ていくと、ほかにも「収納量を増やしたくなった」(22%)、「広いリビングがほしくなった」(22%)、「部屋数がほしくなった」(22%)が上位に挙がる。
在宅勤務で仕事用の空間の確保が必要になったり、日中に家族が多く在宅することで住宅の広さや部屋数を求めるようになったりといったことが考えられる。
同様に、「通風に優れた住宅」や「遮音性に優れた住宅」、「日当たりのよい住宅」、「冷暖房効率に優れた住宅」など、住宅の快適性を上げたいというニーズも高く出ている。これまで日中はほとんど外にいたのに、在宅時間が長くなって、住宅の快適性の重要度が高まったと見てもよいだろう。
■コロナ禍で、住まいの物件種別やエリア選びにも影響大!?
次に“変化”を見てみると、一戸建てか集合住宅(マンション)かについては、一戸建て派が増えたという現象が起きている。
一戸建て派(「ぜったい一戸建て」29%+「どちらかといえば一戸建て」34%)が63%で、2019年12月調査より7ポイント増え、集合住宅派(「ぜったい集合住宅」7%+「どちらかといえば集合住宅」15%)が22%で、2019年12月調査より10ポイント減っている。
これは、単純に一戸建てかマンションかというだけではなく、一戸建てのほうが広さや部屋数を確保しやすいこと、マンションの特徴である駅からの近さなどの重視度が変わってきたことも影響しているのだろう。
「広さ」と「駅距離」のどちらを重視するかを聞いたところ、「どちらかといえば広さ」が増えて、「どちらかといえば駅からの距離」が減って、結果として広さ派が52%と過半数を占め、駅距離派が30%にとどまった。2019年12月調査がほぼイーブンだったのと比べると、潮目が変わった感がある。
交通利便性の重視度が下がる傾向は、リノベるの調査にも表れている。2020年1~3月を「コロナ前」、4~5月を「withコロナ」として、来訪客の変化を同社のスタッフに聞いた調査では、エリア選びで最も重視する項目が、「通勤時間」でコロナ前60.3%→withコロナ21.9%、「最寄駅からの距離」で32.9%→21.9%と大幅に減っている。その逆に、「自然が多い場所」で5.5%→27.4%、「郊外志向」で0%→21.9%と大幅に増え、利便立地から住環境立地への転換が見られる。
さて、コロナ禍で新しい生活様式が求められるようになり、家庭によっては家族の在宅時間が長くなっている。それによって、従来の通勤時間や駅からの距離といった交通利便性を重視する傾向が薄れ、テレワークの場合でも家で快適に暮らせる住み心地を重視する傾向が強まったことを調査結果は示している。
コロナ禍の収束時期はまだ見えていないので、それぞれの事情、それぞれの生活スタイルによって、住まい選びの条件はさらに多様化していくだろう。
(suumoジャーナルより引用)