記事紹介2020年04月19日
住まいである自宅を売却すると、まとまったお金を手に入れることになります。しかし忘れてはいけないのは、そこにかかる「税金」。不動産売却の金額は高額なだけに、いくら税金がかかるのか不安になる人も多いと思います。不動産売却を考える前に、どんな税にいくらかかるかを把握しておきましょう。
また税金を安く抑えられるケースもありますので、あわせて解説します。
■不動産の売却に税金はなぜかかるの?
不動産を売却をすると、どんな税金がかかるのでしょうか? 売却した際の利益には、所得税と住民税、そして2037年までは復興特別所得税がかかります。
「所得税と住民税ならいつも払っている」と思われるでしょう。基本的に収入があって手元に残ったお金(所得)は、税金がかかる対象になります。企業から給与をもらっている方は、給与所得として給与から所得税や住民税が引かれていますね。
不動産を売却した場合は、給与所得とは別に「譲渡所得」として課税の対象になります。給与所得に関しては会社が税の申告を行っていますが、譲渡所得は自分で確定申告をする必要があります。また譲渡所得は「分離課税」となっていて、給与所得や事業所得などとは切り離して計算することにも気をつけましょう。
では確定申告する時の譲渡所得の金額はどのように計算すればよいのでしょうか。
それを式であらわすと次のようになります。
課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)
譲渡所得とは、不動産を売買して手元に残ったお金から経費を引いたものです。もっと簡単にいうと儲かったお金のことなのです。
ですから、売却額から購入した物件価格と、仲介手数料や登録免許税など物件の取得にかかった費用、そして売却時にかかった仲介手数料や、測量費用などを引いた費用が譲渡所得となり課税されます。
ここで気になるのは、もし不動産売却で損をしてしまった場合です。実は、損失が出た年の所得と相殺して所得税や住民税を減らす「損益通算」の申請ができるケースがあります。
基本的には不動産を売却して損失を出しても、土地や建物の譲渡による所得以外の所得との損益通算はできませんが、マイホームを売った場合には、損失を控除できる特例があります。
売却した年の1月1日現在で、5年を超える所有期間を持つマイホームを譲渡して損失した場合には、下の2つの特例により、損失金額をその年の他の所得と「損益通算」することができるのです。
1.マイホームを売却した年の前年からの3年間で新たにマイホームを購入し、年末にその新たなマイホームの住宅ローンが残っている場合は、売却したマイホームの譲渡損失の金額について「損益通算」と「繰越控除」をすることができる場合があります。
2.新たにマイホームを買い換えない場合は、住宅ローン残高からマイホームの譲渡対価の額を控除した残額を限度に、そのマイホームの譲渡損失額を「損益通算」と「繰越控除」をすることができます(マイホームの譲渡契約締結日の前に住宅ローンが残っているマイホームを売った場合)。
また、その年で通算しきれなかった「譲渡損失」の金額がある場合は、翌年以後3年内の各年分の所得から繰越控除することができます(合計所得金額が3,000万円を超える年分を除く)。
■金額の目安は所有期間によって変わる
では実際に譲渡所得が出たとして、税金はどれくらいになるのでしょうか。これは物件の保有期間によって税率が変わります。その分岐点となるのが5年。それを境に「長期譲渡所得」か「短期譲渡所得」に線引きされ、所得税と住民税はそれぞれの以下のような税率で計算されます。
・長期譲渡所得
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その物件の所有期間が5年を超えるもの
税率:20.315%(うち所得税15%、住民税5%)
・短期譲渡所得
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その物件の所有期間が5年以下のもの
税率:39.63%(うち所得税30%、住民税9%)
※2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得額の2.1%を所得税と合わせて申告納付することになっています。
短期の所有だった物件を売却するほうが、税率が高くなっていますね。もしも短期で売却する大きな理由がなければ、5年以上待ってからの売却のほうが節税になります。切り替わるギリギリの時期の場合、所有年数は不動産の取得日から引き渡した年の1月1日までを計算することに注意して、できれば長期譲渡所得になるまで待つ方が得になります。
とはいえ長期譲渡所得の場合でも、譲渡所得に対して課せられる税率は高く、例えば譲渡所得が300万円だとしたら、支払う税金は約60万円にもなります。譲渡所得への課税が軽減される特例がありますので、下の3つに当てはまる場合は、ぜひ利用してください。
1.3,000万円の特別控除の特例
居住用の不動産に限り、その譲渡所得から3,000万円を控除する特例のことで、所有期間を問わず適用されます。つまり譲渡所得から3,000万円を引いた残りの金額に、上記の短期譲渡所得または長期譲渡所得の税率を適用した金額を納税することになります(譲渡所得が3,000万円に満たない場合は、その金額までの控除となり税金はゼロ円になります)。
2.10年超所有軽減税率の特例
10年を超えて所有している居住用財産を売却して利益が出た時に、譲渡所得税の税率が低くなるのが「10年超所有軽減税率の特例」です。これは長期譲渡所得の税額より低い税率で計算する軽減税率を適用できる特例です。課税譲渡所得が6,000万円までの部分については所得税、住民税合わせて税率14.21%に軽減されます。
3.特定居住用財産の買換え特例
居住用財産を売却して新しい居住用不動産に買い換える場合、売却価格よりも、買い換えた不動産の購入価格のほうが高ければ課税されないという制度です。
譲渡所得に対する課税は大きいので、軽減するためにこれらの特例があるということですね。
■不動産売却でかかる住民税はいつ払うか
不動産売却によって利益が発生した場合、翌年の3月15日までに確定申告を行い、それによって納税金額が確定します。確定申告を期限内に行っておかないと、申告漏れとして延滞税が発生するので注意してください。
確定申告を済ませると、その翌年6月から住民税を支払うことになります。納税は年4回に分けられ、6月、8月、10月、翌1月の末日が期限となっています。
■まとめ
不動産を売却すると、その利益にばかり目がいってしまいがちですが、利益にともなって納税の義務が発生することを忘れないでおきましょう。
また不動産売却のタイミングに留意したり、特例を利用することによって納税額を減らすことができるので、知識を活用してくださいね。
(マイナビニュースより引用)