記事紹介2018年08月14日

19年度住宅・不動産関連団体の税制改正要望 消費増税対策に重点 ローン控除など床面積要件緩和も

世間はお盆休みの真っ只中だが、それが終わると概算要求(各省庁が財務省に対して行う歳入歳出予算の見積もり)と税制改正要望の時期が到来する。住宅・不動産関連団体では、国土交通省に19年度の税制改正要望を提出している。各団体はどのような要望を行っているのか。

19年度の各団体の税制改正要望を見ると、重点を置いているのが19年10月に行われる消費税率10%増税に伴う駆け込み、反動減対策だ。


■省エネP復活を

不動産協会(菰田正信理事長)では、措置済みの対策に加え、住宅ローン減税の拡充、住宅取得資金の贈与特例などの税制措置に、すまい給付金の拡充や省エネ住宅ポイントなどの予算措置を含む十分かつ総合的な対策が必要との判断。必要な拡充幅などは明らかにしていないが、前回の5%から8%への引き上げ時と比べ住宅価格も上昇しており、相応の拡充幅を求めていく考えだ。

不動産流通経営協会(FRK・榊真二理事長)は、税率引き上げ後の住宅の購入支援について、需要変動を平準化するため、住宅ローン減税などの拡充と、多重課税の排除として、印紙税の廃止などを求めている。

全国住宅産業協会(神山和郎会長)は、具体的に5点要望している。まずは、「省エネ住宅ポイント制度の復活とすまい給付金の増額・拡大」だ。既に10%への引き上げ時におけるすまい給付金措置は施されている。しかし、あくまで引き上げに伴う負担軽減であり、消費税率引き上げに伴う心理的な買い控えを払拭するものではないとし、即効性のある措置の必要性を訴えている。

次に、「すまい給付金・住宅ローン控除面積要件の緩和」。現在50m2となっている床面積要件の緩和を求めている。なお、この点については不動協、FRKも同様で、特にFRKは住宅ローン減税に限らず、不動産取得税特例、登録免許税特例などでも同様に50m2となっている床面積要件を40m2に引き下げることを要望している。マンション価格の高騰で職住近接の「コンパクト」人気が上昇しているという背景がそこにある。

3番目としては、「住宅ローン控除期間(現行10年)の延長」。住宅ローン控除の限度額は、一般住宅では400万円となっている。しかし、多くの場合、10年間では控除しきれず、子育て世代では、10年間の終了時に子供の成長に伴い教育費の負担も増額する。控除期間の延長により子育て世代などの負担を軽減できるとしている。

4番目は、「住宅取得等に係る贈与税の非課税制度の適用期間の延長」。直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度で、高齢者が保有する金融資産を子育て世代支援のために積極的に活用できる制度であり、延長要望となっている。

最後は、「フラット35Sの優遇金利適用期間の延長」。フラット35Sの金利を当初10年間または5年間引き下げるもので、この期間を延長することで、若年世帯の負担を軽減できるとしている。


■買取再販特例の延長求む サ高住、空き家対策、所有者不明土地

消費増税以外に関する要望を見てみると、不動協では、「時代を先取りするまちづくり推進税制」「豊かな住生活を実現するための税制」「不動産事業の推進等に不可欠な税制」の推進を挙げている。木密地域の解消に向けた新たな仕組みの創設に合わせた税制支援やオフィスのBCP機能向上に対する税制上の支援措置を求めている。

多くの団体で要望しているのが、「住宅の買取再販に係る不動産取得税の特例の延長」だ。事業者が中古住宅を買い取り、住宅性能の一定の向上を図るための改修工事を行った後に住宅を再販売する場合、仕入れ時の不動産取得税について一定額減額する制度。以前は、不動産取得税が事業者が買い取った時点と買主が取得した時点の2回かかってしまい、事業者にとって負担が大きく、普及のスピードが遅い原因でもあった。15年度税制改正で、仕入れた住宅の特例が創設され、17年度で、住宅の敷地にまで特例が及ぶことになった。事業者の負担を軽減することで積極的な取り組みが促進されるとする。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に係る特例延長についても、不動協、全住協などが高齢者の居住の安定確保のため、適用期限の延長を求めている。

このほか、所有権移転登記などの登録免許税の税率特例の延長、既存住宅等の住宅ローン控除の最大控除額200万円から300万円の引き上げ、空き家の売却などの場合の3000万円特別控除の適用期限の延長などが要望されている。


■既存住宅にも 固定資産税特例を

特例措置の創設としては、FRKが住宅ローン減税の二戸目居住住宅・住宅地への適用、固定資産税2分の1特例を既存住宅についても適用することなどを挙げている。

全住協は、空き家の所有者が空き家を取り壊し、その後5年以内に土地を活用する場合、固定資産税の特例措置(課税標準を6分の1に減額)を適用する制度の創設や所有者不明土地を円滑に利用するための特例措置の創設を要望する。

不動協はこのほか、消費税率の引き上げに左右されない安定的な負担軽減措置の検討を要望している。軽減税率の適用など、欧米の税制動向などを含め、住宅消費税に関する抜本的な課題の検討も併せて求めていく。

(住宅新報Webより引用)